死ぬ前には、絶対に人に頼る必要がでてくるからです。
「死ぬ」とは、体の機能がすべて停止することです。
ポックリ死や事故などによる即死以外は、ある日突然、一瞬のうちに体の機能が全部ぴたっと止まることはありえません。
人が老いて、病気になって死ぬということは、ちょうど、生まれた赤ちゃんが成長する道のりの逆をたどって、生まれる前の場所に戻っていくようなものです。
生まれたての赤ちゃんは、最初寝てばかりいますが、だんだんハイハイができるようになり、歩けるようになります。
最初は、おっぱいしか飲めなかったのが、徐々に流動食を口にし、固形物が食べられるようになります。
死ぬときは、その逆をたどるのです。
だんだん歩けなくなり、話をする時間も短くなり、寝ている時間が長くなります。
赤ちゃんが人の世話にならないと生きられないように、死ぬときもまた、人の世話にならないと、死ぬことはできません。
だから、「人の世話になってはいけない」と思っている患者さんは、死ぬ前に人の世話になったとき、とても悪いことをしている気分に駆られてしまうというわけです。
あなたの大切な人が「がんばり屋の患者さん」なら、「人に頼ることで幸せに生活すること」を少しずつすすめてみてください。
「人に頼ること」は、人に迷惑をかけることにならないばかりか、人を幸せにすることだってできるのです。
たとえば、誰かから頼られて、手伝ってあげたら、「わあ、ありがとう。
助かった。
あなたがいてくれてよかった。
」ととっても喜ばれて、自分も心がホカホカして嬉しい気分になった…。
そんな経験はありませんか。
頼り上手な人は、人を幸せにします。
それができれば、たとえ人の世話にならないと生きていられない重病人になったとしても、みんなに幸せを分けてあげることができるのです。
ですから、「人の世話にならないと生きていけないダメな人間になった。
私には生きている価値がない」と患者さんが言い出したときには、「立派な頼り上手の患者さん」になることをすすめてみてください。
「頼り上手」になるには三つのコツがあります。
1自分の中の「できない部分、弱い自分」を認める。
2相手の手伝い方が、自分のやり方と違っても、受け入れる。
3相手のやり方に不満があっても、「ありがとう」と心から感謝する。
という三つです。
どれも、意外にとてもむずかしいことですから、少しずつ練習してみましよう。
生活の中でイベントを考えてみよう。
介護でマンネリになりがちな生活の中にイベントを盛り込むことは、患者さんにとっても周りの人にとってもよい気分転換になります。
「闘病の中にもこんな楽しいこともあった」という思い出は、のちのち家族の心の支えにもなります。
イベントの企画は、たいそうなことをする必要はありません。
誕生日会、ピクニック、ミニコンサート、トランプや百人一首大会、ホームパーティ、季節の行事にちなんだイベントなど、気分転換になるものなら何でもOKです。
凝った企画を練らなくても、工夫次第で楽しいイベントはできるもの。
私も桜の季節には、花見のできない母のために満開の桜をビデオに撮ってきて、桜の枝を一本テーブルに生け、桜餅を並べて、BGMに琴の音色を流したりしました。
病院のような制約の多い無機的な空間にいる患者さんのお部屋には、ちょっとした季節を感じさせるもの(節分の鬼のお面、ひな人形、鯉のぼり、月見団子、クリスマスツリーなど)を飾るだけでも、心休まるものです。
余命いくばくもない患者さんの場合、何かイベントを企画したときには、ビデオや写真を撮っておくことをおすすめします。
「痩せて醜くなった姿を残したくない」という場合はやめたほうがいいですが、ビデオや写真の中に残された患者さんの笑顔は、「療養生活の中でも、こんな笑顔のときがあったのね」と、のちのち周りの人の心の支えになってくれるものです。
そして、あまり面会に来られなかった人たちにも、「こんな楽しいときもあったのよ」とアルバムやビデオを見せることで、安心してもらえます。
面会になかなか来られなかった人というのは、患者さんが亡くなられたあと、あれこれ問題を投げかけてくることがありますが、視覚的な思い出が残っていると、納得してもらえます。
患者さんが死について語ったときは自分が死ぬことを認めたがらない人ほど、心の中では強く死を意識しているものです。
そのため、患者さんは、折りに触れて他人の話に置き換えるような形をとりながら死について語ったりします。
「隣の○○さんのおばあちゃん、眠っているうちに亡くなったんですって。
いいわね」「俳優の○○さんは、葬儀は密葬だったんですって。
私も、葬式は派手じゃないほうがいいなあ」「同じ病室の○○さんは、最後まで治療をするってがんばっていたけれど、私がもし治らない病気なら、苦しいことはいやだわ」こんな話が急に出てくると、私たちは焦って、病人は「優しい嘘」を求めている。
それをいちばん上手に言えるのが家族や友人。
もっともむずかしく、しかし病人にとってもっとも心地よいのが、「何もせず、ただそばにいる」という看護。
「そんなばかなこと言わないで」「そんな暗い話をするなんて」と話を否定したりそらしたりしがちです。
実はこういう話が出てくると、患者さんよりそばにいる人のほうがつらくなってしまいます。
だから避けようとしてしまう…。
しかし、患者さんのほうは話をしたいのです。
なのに、話をそらしてしまうと、大切な「思い」は患者さんの心の奥底に沈んでしまったままになってしまいかねません。
こんなときには、慌てず、怖がらず、相手の話にじっくり耳を傾けてみましょう。
仮に、あなたとしては病人に死については考えてほしくないという気持ちが強いなら、「そうね、万が一のために、あなたの話は聞いておくわ。
でも、『死んでしまう』なんて考えないでほしいの」とひと言添えるといいでしょう。
病人の元気を取り戻すために生きがい探しの手伝いをする。
無理に「なんとか助けよう」としなくても「時間」が薬になることも。
周りの人がリラックスすると周りの「空気」が温かくなり、病人の心が癒される。
頼り上手の患者になることが療養のコツ。
イベントを企画することは、マンネリになりがちなお互いの関係にいい刺激を与え、思い出づくりにもなる。
病人が「死」について話し出したら、慌てずじっくり耳を傾ける。
病人の心のケアも忘れずに調子の悪いときに「目標」はつらい闘病中の患者さんを追い詰めるものが「目標」だといったら、びっくりするでしょうか。
患者さんの調子のいいときには、確かに「目標」は励みになるのですが、調子の悪いときや自信を喪失しているときなどに「目標」を掲げられると、病人は追い詰められる気持ちになるものです。
私たちは、小さい頃から常に「目標」を掲げられて生きてきました。
いい学校に入る。
いい成績を取る。
いい会社に入る。
より高い地位に就く。
より素晴らしい業績を残す。
いつも、社会(家庭)に貢献できる人間でいる。
よい人間と皆からいわれるようになる…。
実は、そんな社会のペースに足並みがそろえられなくなったとき、大きな病気にかかりやすいのです。
だから、病気をしているときほどゆっくり自分のペースで過ごしたいもの。
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